『用途変更』とは
既存の建物を改修・増築して従来の建物とは別の用途に変更する場合には用途変更の手続き(確認申請)が必要になります。
たとえば、以下のような場合がそれにあたります。
・一戸建て住宅→デイサービス
・マンションの1階テナント部分→学童施設
・雑居ビル1階事務所→障害者通所施設
これらの場合は、その建物の所在する行政官庁等に『用途変更』による確認申請が必要になります。(*ただし、営業床面積が200㎡以上)
その際、必要になってくるのがその建物の『検査済証』です。しかし中古物件の場合、そのほとんどの建物にはこの検査済証がない場合が多く、その後の申請手続きに支障をきたしていました。
では、検査済証のない既存建築物に関しては一切『用途変更』ができないのか、というとそうでもありません。
建築士による建物調査によって、その建物が違反建築ではなく既存不適格建築物であることを証明するか、もしくは違反部分等の是正をすれば用途変更が可能になります。(行政側との協議が必須)
今さら聞けない「検査済証はなぜ必要か」(楽待)
~検査済証のない建物の救済措置~
既存不適格調書について
国土交通省から公表されている「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」の中のフロー図にはその手続きの流れが示されています。
このフロー図が12条5項の報告の手続きになるのですが、このとき報告書に添付する書類のひとつが『既存不適格調書』です。
■既存不適格建築物と12条5項の報告
既存不適格とは、既存の建物が法令の改正によって改正後の技術的基準に適合しなくなったとしても、その建物を違反建築物として扱わないこととするものです。
既存の建物の用途変更や増改築について『既存の建築物に関する制限の緩和』(法第86条の7)の適用を受ける場合、その建物が『既存不適格』であることを証明する必要があります。
たとえば、平成8年に建築された木造二階建て専用住宅の場合、それ以降に法改正された部分はすべて既存不適格かというと、そうでもありません。その判断は12条5項の報告の提出先の行政窓口によっても若干の違いがあるようです。
また、その内容については『既存の建築物に対する制限の緩和』として法第86条の7第一項に示してありますが、この既存不適格建物に対する緩和措置は意外に複雑で、構造規定もたいへんわかりにくい内容になっているため注意が必要です。
■既存不適格建物の増築等ついて
建築基準法第86条7において、制限を緩和する規定が設けられていますが、その取り扱いについて平成21年9月国土交通省から関連告示の改正、技術的助言が行われました。
・既存不適格建築物の増築等に係る建築確認の申請手続きの円滑化について
・既存不適格建築物の増築に係る基準の緩和について(4号木造建築物)
このように、その建物が既存不適格建築物であることを証明するための12条の5項の報告は、検査済証に代わる書類として行政側が審査(協議)することになるため、建物によっては非常にハードルの高い手続きとなります。
ここまでお話してきてお分かりになられたと思いますが、12条5項の報告は申請ではなく『報告』ということになるわけですから、相談窓口に『受理』されたことで効力が発生します。
■既存不適格建物の『用途変更』
既存の建物の用途を変更して特殊建築物にするには、規模が200㎡以内の変更、もしくは類似の用途間で行われる場合を除き、用途変更・確認申請の手続きが必要になります。
繰り返しになりますが、既存の建物の用途変更手続きはその建物が完成した際に完了検査を受けている場合(検査済証あり)とそうでない場合(検査済証なし)では申請の方法が大きく変わってきます。
・検査済証のない既存建築物の用途変更(12条5項の報告)
■法的根拠 (これ以降は専門的になります)
法86条7項
(既存の建築物に対する制限の緩和について)
法87条
(用途の変更に対する法律の準用)
現況から用途を変更する場合でも確認申請を必要としない場合があります。
令137条の17
(用途を変更して特殊建築物とする場合に建築主事の確認等を要しない類似の用途)
令137条の18
(建築物の用途を変更する場合に法第24条等の規定を準用しない類似の用途等)
■用途変更における法の遡及と既存不適格
建基法第87条第三項
用途変更に際して、既存不適格の規定が継続される場合について規定してあります。
【防火】法第24条、第27条
【避難】法第35条から、法第35条の3
【採光・換気】法第28条
【用途地域】法第48条
上記の規定については原則として遡及しません。また建基法第3条第2項の規定により様々なケースがあります。
このほか基準時(建物着工時)の法律に従う事項、現行法が遡及される事項があります。*行政窓口に要確認